サイコロは、表と裏を合わせると7になる。
サイコロサイコ -セブンスヘブン-
先月配信されたサイコロサイコをプレイして一通りクリアしたので、感想を書いてみる。このサイコロサイコは、年始にプレイして感想を書いたメンヘラフレシアの続編ということで、肩書も「ホラー恋愛アドベンチャー」と前回のメンヘラフレシアとほぼ同じになっているし、ゲームシステムというか構成もほぼ同じになっている。
今回は運命の分かれ道になる選択肢が4~5個出てくる。前回のように1箇所でHAPPYとBADが分かれるという単純な構成ではなく、選択をミスるとBAD ENDになるため前回よりはちょっと面白い。
ただBAD ENDの選択をすると、本来のシナリオから大きく変わるものもあるのであくまでスパイス的な要素なんだと思う。(本来のシナリオに関わるBAD ENDもあるので、全部が全部ではないんだけどね)
サブタイトルは、セブンスヘブン。約すと「7番目の天国」となる。この7番目というのがこのゲームには大きく関わってくるもので、サイコロの出目の数分の6人のヒロインに対し7人目のヒロインのことを指しているんだろうなと思っている。
既にPCゲームとして販売されていて各シナリオを解説した資料も販売されていたりするので、ゲームをプレイしてその世界観にハマるようなことがあったら買ってみるといいかもしれない。(因みに私は買ってないw)
概要
主人公はめたろーという名前で、メンヘラフレシアのいたろーと一文字違いになっている。今回もシナリオがオムニバスではあるものの、基本的な背景は同じになっていて私立高識学園に通う高校生だ。
そして、今回は主人公の幼なじみに七七(なな)という女の子と前作にも出てきた雪丸(ゆきまる)が全てのシナリオで登場する。雪丸は基本友人だけど、七七との関係は時にはめたろーの彼女、時には単なる友達など色々なパターンで話が進んでいく。その中にヒロインが登場し、やがて心に闇を抱えるヒロインによって物語は悲惨な展開を迎えるという流れだ。
ヒロインはサイコロの目に合わせて6人いる。そして、名前は全てサイコになっている。またシナリオの最後にはヒロインと関連づけられた花も語られる。
出目 | 名前 | 色 | 花 |
---|---|---|---|
1 | 斉子 | 紫色 | ムスカリ(絶望の埋葬花) |
2 | 才子 | 水色 | ローズマリー(思い出の花) |
3 | 骰子 | 緑色 | クローバー(幸福の花) |
4 | 祭子 | 橙色 | ハナビシソウ(富と成功の花) |
5 | 災子 | 桃色 | シャクナゲ(威厳の花) |
6 | 罪子 | 赤色 | ザクロ(優美な花) |
物語はメンヘラフレシアと同じく4つのパートから構成されていて、今回はサイコロを振る時の手の動きで表現している。
- パート1:サイコロを掴んだ手
- パート2:サイコロを振るため手を開いたところ
- パート3:開いた手から落ち始めるサイコロ
- パート4:落ちたサイコロ
パート1の途中で、前作メンヘラフレシアで出てきたはなばたけの場面が出てくる。ここで今作のヒロインと前作のヒロインとの対話が入る。メンヘラフレシアの続編と言われているけど、関わりといえばこの対話と最後のシナリオで出てくるヒロイン達との会話程度で続編というにはちょっと弱いかもしれない。
また、パート3の途中でも前作と今作のヒロインの対話が入る。ここで対話している前作のヒロインの名前が明かされる。といっても、喋り方でバレバレなヒロインもいるので前作のヒロイン名を隠す必要は無いと思うんだけどね・・・。そして、この対話で今作のヒロインが抱える心の闇が徐々に明かされていく。
パート4の最後の選択肢でHAPPY ENDかBAD ENDかが分かれるのは前作と変わらない。メンヘラフレシアと同様にBAD ENDはもちろんのこと、HAPPY ENDでも後味の悪い結果になってしまう。
そして今回も前回とは異なるけど悲壮感のある何語で歌っているかよくわからない曲は健在で、闇を抱えたヒロイン達とその末路に絶妙にマッチしている。この曲の存在がゲームをより引き立てていると言っても過言ではないかもしれない。
そして、これまた前回同様にエクストラには、前回のはなばたけと同じ仕組みで「ろうごく」が用意されている。このろうごくでは、各ヒロインのHAPPY END後に表示されるパスワードを入力することでIFのシナリオを見ることができる。(選択肢は出てくるけどシナリオに影響のあるものはない)
前作との違いは、このIFはヒロインが幸せになるIFなのだろうけど何かが違うものになっていて、それが7番目のシナリオへの入り口になっている点だ。
ということで、各ヒロインのシナリオについて感想を書いてみる。
ヒロイン達とシナリオの感想
第1の出目 斉子
第1の出目のヒロインは、紫色の髪の斉子だ。このシナリオでは、めたろーと七七は恋人同士で付き合っている。そこに転校してくるのがヒロインの斉子だ。(因みに斉子は、前作のヒロインまつりと同じ一人称がボクのボクっ子だ。)
最初は七七や雪丸とも仲良く過ごしているものの、実はめたろーの住むアパートの隣の部屋に引っ越してきていた。遠慮気味の斉子だったけど徐々にめたろーとの距離を近づけていき、七七との関係が悪化していく。めたろーもちょっと優柔不断なところがあって、彼女がいるのに斉子と仲良くなろうとしてしまう。
そして、とうとう二人が鉢合わせする展開になり修羅場に。
何故、斉子は七七からめたろーを奪おうとするのか?壮絶な修羅場の後に迎えるHAPPY ENDでその心の闇が語られる。家族に関心を持たれることが無かった彼女は少しずつ道を外していってしまう。そんな時に出会ったのが子供時代のめたろーだった。めたろーの何てことのないやさしさに触れ、それ以来めたろーのために生きることを決意する。
このシナリオは、他のシナリオと違ってちょっと凝った演出がされている。オープニングの文言に「次元すらも破壊させる愛」と書かれている通りエンディングになってもその力を発揮して時空を歪めてくる。一瞬ゲームがバグったのか?と思ったものの、ゲームの枠を飛び越えメタな部分にやってくるところは少々コワい。
それとはなばたけで前作のヒロインとの対話は無い。そこにいる物言わぬ猫に自分の気持ちを独白する形になっている。
IFのシナリオになっても、めたろーに対する気持ちは変わることがない。ただ、シナリオに七七がいないので修羅場にすらならない。おつきあいしてめでたしめでたし、な展開になる。
関係ないけど、ヒロインの声を担当しているのはスパイファミリーでアーニャ役をやっている種崎さんだ。種崎さんは、マルコと銀河竜でパンダグラフの声も担当していたと思うけど、アーニャの声を出している人とは思えないほどに雰囲気がガラッと変わるところはスゴいな・・と感じた。
第2の出目 才子
第2の出目のヒロインは、水色の髪の才子だ。このシナリオでは、七七も雪丸も幼なじみで単なる友達だ。ヒロインは他のシナリオと違って唯一年上の女性になっている。学校にやってくる教育実習生、それがヒロインの才子だ。
めたろーは忘れてしまっていたけど、才子は子供時代に一緒に遊んでいたことのある年上の女の子で、学校の教師を目指しめたろーに勉強を教えると約束し、引っ越しで離れ離れになってしまった経緯がある。
教育実習で学校に赴任してきたときにめたろーと話し、思い出しためたろーと急速に接近していく。それまでモテない人生を歩んできためたろーは、すっかり美人になった才子と密接な関係になり、無断で部屋に寝泊まりしたことが原因で母親や七七や雪丸に心配を掛け次第に険悪な雰囲気に。
才子の心の闇は何なのか?はなばたけで前作のヒロインと対話することで、少しずつその輪郭が見えてくる。
BAD ENDは闇に飲み込まれた才子がその狂気をむき出しにし悲惨な展開になり、HAPPY ENDはどう転がってもよくはならない自分を知りつつもめたろーとの時間を過ごす切ない展開になる。HAPPY ENDの後に語られる闇の部分は、個人的にはちょっと納得の行かない内容だったりするけど、こういう人もいるんだろうな・・とも感じた。
IFのシナリオは、その心の闇を抱えていてもなんとか一線を越えずにがんばった結果の世界になっている。小さなことでも自分のやってきたことを人から認められることで救いになるという話しで、彼女が心に抱えていたものは氷解していく。
このIFシナリオ、リアルの世界でも同じ様に感じる人は多いのではないだろうか。生きていて辛い時、ほんのちょっとした言葉が救いになったり嬉しく感じたりすることがある。個人的には、IFシナリオの中で一番好きな話だったりする。
第3の出目 骰子
第3の出目のヒロインは、緑色の髪の骰子だ。このシナリオでも七七も雪丸も幼なじみで単なる友達だ。ただ、めたろーは友達を演じているだけで、本心では友達と思っていない。都合よく話を合わせて、問題なく平穏に学校生活を送るために利用をしている。また、めたろーの家庭では母子家庭で母親からDVを受けているため、学校が終わると家に帰らずある場所で女の子と一緒に過ごす毎日を送っている。
そのある場所とは近くにある廃墟だ。そこにいる女の子がヒロインの骰子。骰子は年齢不明だけど、めたろーより年下の女の子。家庭でのDVから肉体的にも精神的にも参っているめたろーの心の拠り所になっている。
お互いに一緒にいることを誓い合うものの、学校ではめたろーの言動を怪しく感じた七七がめたろーの後をつけることに。この行動が結果として悲劇を招くことになる。
このシナリオは、骰子の心の闇というよりは、寧ろめたろーの心の闇が主体になっている。プレイしていれば骰子の描写に違和感を感じるようになるし、そしてほとんどの人はその違和感がある確信になると思う。めたろーの心の闇は親からのDVだけではなく、とある出来事が原因になっていることがわかる。
BAD ENDでもHAPPY ENDでも骰子が救われることはなく、また客観的に見てめたろーが救われることもない。救いようのない話というのは、こういう話を言うのかな・・。
IFシナリオでは、骰子がめたろーのいる学校に通っている・・すなわち生存したシナリオになっている。ただ、このIFでもお互いが一緒にいることを誓い合うことに変わりはない。
話としては他のシナリオより比較的マイルドではあるんだけど、いくつかわからない部分があった。BAD ENDの中で、母に会って殺害されてしまうというものがあるんだけど、この時母は「やっぱりあなたが」というセリフを言う。これは骰子がめたろーとつながりのある存在ということなんだろうか?
それと、母親は骰子が大人になったような風貌をしている。これは偶然なのか?それとも何かの関連性を示すものなのか?
その辺のところが解りづらいなと感じた。
第4の出目 祭子
第4の出目のヒロインは、橙色の髪の祭子だ。このシナリオでも七七も雪丸も幼なじみで単なる友達だけど、雪丸と七七は恋愛関係にある。それを羨ましく思いつつもその気持を出さないようにしているめたろーだ。
一人寂しくしているめたろーが出会った同学年の女の子がUsaTuberの祭子。同学年だけど、彼女は学校に行っていない。UsaTuberとして少し成功していて、より再生数を稼ごうと躍起になっている。学校に行っていないという件からリアルな話でいくと、YouTuberのゆたぼんをオマージュしているのかもしれないけど、物語としては大分違っている。
彼女はハナビシチャンネルというチャンネルで主に検証系動画をアップしてバズることを目指している。少々おバカっぽいキャラで和やかに話は進んでいくんだけど、選択肢を間違えた途端に彼女の狂気を見ることになるので気を抜けない。
因みに、彼女がはなばたけで前作のヒロインと対話する時は何故か少年になっている。その少年は、生きることに意味や価値を見いだせない状況で、何故そうなったのか?を淡々と話していく。
おバカ展開からガラリと雰囲気が変わるのは、祭子とめたろーの関係に気づいた七七と雪丸が動画の手伝いをするところからだ。もし、祭子が七七や雪丸に出会わなければ、悲惨な展開にならなかったのかもしれない。
このシナリオは、おそらく全シナリオの中で一番凄惨でおぞましい内容になっている。ま、簡単に言ってしまえばグロい。彼女が持つ心の闇と狂気は凄まじいものがあり、オープニングに出てきた「滾らせた強い復讐心」という言葉がそれ象徴している。
IFのシナリオでは、祭子の持つ復讐心は変わらないものの共感してくれるめたろーがそばいることで、行動に移さずに済んでいる。
ここでも理解できないというかしづらいのは、はなばたけで少年と表現されていたヒロインが何故女性として生きているのか、だ。可能性としては女性として生きざるを得ない状況になったということだけど、はなばたけで話していた内容(暴力を受けていた)だけで女性になるものだろうか?と疑問に思ってしまった。
因みに、声の担当をしている井澤さんはマルコと銀河竜でマルコの声を担当していた方だ。カワイイ感じの声よりボーイッシュな声って印象があって、このゲームでもそんな雰囲気の声になっている。
第5の出目 災子
第5の出目のヒロインは、桃色の髪の災子だ。このシナリオでも七七も雪丸も幼なじみで単なる友達だけどあまり関わってこない。一部ヒロインと話しをする機会がある程度で、基本はめたろーとヒロインとの話で展開していく。
ヒロインの災子は、いわゆる不幸体質というもので、不幸の手紙を下駄箱に入れられたり、転んだり、車に跳ねられたりと次から次へと不幸が舞い込んでくる。どんくさい感じの災子だけど、めたろーは何だかんだ言いながら面倒をみるようになり、そのうちそれが愛情に発展していく。
それと、明るい感じの災子だけど、家庭は貧乏で家の中に居場所が無い状態だ。
こうやってみると、救いようのない不幸が重なってしまうところが災子の闇なのか?と思ってしまうけど、実はそうではないことがHAPPY ENDを迎えると語られる。そして、このシナリオのBAD ENDは、これまでの災子の言動からは考えられないような言動をしてきて、その変わりっぷりがコワい。おまけにHAPPY ENDでも、かなり切ない終わりになっていて災子は救われないし、BAD ENDならめたろーが救われない。なんとも後味が悪いシナリオで、個人的には一番メンタルに来ると思っている。
そして、IFのシナリオは後味の悪かったHAPPY ENDのIFになっている。この一瞬を逃すこと無く、災子を救うことで本当の意味でHAPPY ENDになっているため、他のIFシナリオより救われた感が強い。
第6の出目 罪子
第6の出目のヒロインは、赤色の髪の罪子だ。このシナリオでは、第1の出目と同じくめたろーと七七は恋人同士で付き合っている。ヒロインの罪子は、七七の後輩なんだけど最初からまともにコミュニケーションができない。七七がいるときは会話できるのに、いなくなった途端に話しをしなくなる。
ゲーム全体としてはめたろーが主人公であるものの、このシナリオでは七七がメインになる。異常なまでに七七に執着する罪子は、七七につきまとい始め、ストーカー状態になる。そういった意味ではストーカーの怖さがこのシナリオにはあって、おそらく女性でなくてもここまでつきまとわれると恐怖を感じるはずだ。
そんな罪子が抱える闇は何なのか?答えは罪子の家庭環境と姉にある。はなばたけで前作のヒロインと対話するとき、自分が拒絶されてしまったのではないかと不安を口にしている。不安が不安を呼び、疑心暗鬼に陥っている罪子は徐々に精神が壊れていき、結果HAPPY ENDなのに誰も良いことの無い悲惨な状態で終わってしまう。
そして、HAPPY ENDの後話。本編ではあまり細かいことが語られなかった罪子の姉の話しが語られる。
IFのシナリオは姉と罪子が幸せそうなシーンが描かれている。本編のシナリオ、オープニングにある「愛に飢えている」少女である罪子は、ちょっとした七七のやさしさを愛情と受け取ってしまい、七七に姉を重ねて執着するまでエスカレートしているため、このIFのシナリオで救われた感が強い。
TRUE ENDの後
メンヘラフレシアと同じく、TRUE ENDを迎えるとタイトルページが切り替わる。はなばたけで寝転ぶヒロイン達だ。IFのシナリオを全てみると第7の出目となるシナリオが始まる。これをクリア(読む)することでTRUE ENDとなる。
第7の出目に選択肢はないものの、何故か?を考えるというゲームになっている、というと言い過ぎだろうか・・。1~6までの出目のシナリオはどんな意味があったのか?IFのシナリオに雪丸は出てくるのに何故七七が出て来ないのか?サイコロの話しで「表と裏を足すと7になる、これを忘れないで」といった話しが出てくるのは何故か?
また、本編の背景がぼんやりしているのに対し第7の出目のシナリオは背景がくっきりしている。リアルということなんだと思う。
何故めたろーがオープニングで牢屋に入っているのか?それはこのシナリオで明確になる。
そして、TRUE ENDを終えるとエクストラにもう1つシナリオが追加される。これまでのシナリオとはちょっと変わっていて、メタ的な話しの展開になる。理解しづらい内容になるため、これをつける必要があったのか?もしくはつけるにしても、会話の内容を変えたほうがよかったんじゃないだろうか?と疑問に思う部分があった。
メンヘラフレシアもこのサイコロサイコも、ゲームを終えてから色々と考えてしまう、そんなゲームになっている。万人にすすめられるゲームではないけど、普段世の不条理を感じている人には響くゲームかもしれない。そして、前作同様に感情たっぷりにのめり込める人ならより楽しめるゲームなんじゃないかと思った。
以上、サイコロサイコの感想でした。